「ゼロ年代」の名勝負数え歌 - プロレスリング・ノア「Autumn Navi '08」最終戦(武道館) -
一時代を築いたプロレスラーに共通する特徴は何かと問われたとき、私は「自身と同じくらい優秀なプロレスラーが同じ時代にいること」と答える。例えばアントニオ猪木とジャイアント馬場、長州力と藤波辰爾、三沢光晴と小橋健太、橋本真也・武藤敬司・蝶野正洋の闘魂三銃士、ザ・ロックにストーンコールド・スティーブ・オースティン、そしてエディ・ゲレロとクリス・ベノワ(番外で高山善廣とドン・フライ)。同時代に生まれた優秀なレスラー同士による「名勝負数え歌」は、その時代時代に支持されるプロレスとは何かを如実に表し、プロレス界全体を盛り上げ、さほとプロレスに興味のない人間をこの世界に引き込むきっかけとしても作用する。ゼロ年代の「名勝負数え歌」を担うレスラーは誰かと問われた時、丸藤正道とKENTA(本名:小林健太)の2人を挙げることに私は何のためらいもない。
彼らの戦いが一躍脚光を浴びたのは2006年1月。KENTAが持つGHCジュニア王座に丸藤が挑戦した試合だ(参考資料:youtube)。その年の10月、GHCヘビー級王者となった丸藤が挑戦者に指名して行われたタイトルマッチは、東京スポーツが毎年12月に発表するプロレス大賞の年間最高試合賞(ベストバウト)を獲得した(Part.1から4回に分割されて掲載されているようなので、興味のある方はご覧下さい)。
今回の対決、カードが組まれた当初は全日本プロレスのチャンピオンベルトである「世界ジュニアヘビー級」の王者となった丸藤にKENTAが挑戦することになっていたのだが、KENTAがGHCジュニアヘビー級のチャンピオンになったことでこの試合はお互いのベルトを賭けるダブルタイトルマッチとなった。丸藤はこの戦いの後に全日本プロレスの興行でタイトル防衛戦が組まれていたし、団体の垣根を越えた試合が初めて組まれるときはフルタイムドローに終わったことがままあるので、「ダブルタイトルマッチ」となった際に「60分フルタイムドロー決着」という結末に終わることは容易に想像できた。となると問題は、60分間観客を飽きさせず楽しませるために何を魅せるか、という点だ。これほど各々のレスラーのプロレス脳と、対戦相手との相性が試される試合もないだろう。果たして彼らはどんなインパクトを残してくれるのか、セミの試合で眠気に襲われたのでそのまま逆らわずに英気を養い、メインイベントを迎えた。
前置きが長くなったのでこの試合を見た私の感想を一言で書く。彼らは本物だ。
何だかんだで15年以上プロレスを見ているので、60分フルタイムに近い試合やフルタイムドローの試合はそれなりに経験があるわけだが、こんなに集中して、かつ興奮して観戦できた60分間は過去に例がない。彼らが技が繰り出されるたびにこちらの想像を軽々と超えてゆくのだが、それが最後まで続いたことに驚きを禁じえない。ただでさえプロレスファンが過剰な期待を込めざるを得ないカードであるというのに、プレッシャーに押しつぶされることなく素晴らしいプロレスを堂々と披露した丸藤とKENTAには恐れ入るばかりである。
次回の「名勝負数え歌」がいつになるか予想するのは難しいが、次回も我々プロレスファンの想像力を遥かに超える、プロレスラーにしか表現できない「凄さ」を見せて欲しい。
(「Autumn Navi '08」私的写真集 要・mixiアカウント)
