新説?妄想?面白いからOK - 宮本英樹『センゴク』『センゴク天正記』-
大分戦はテレビ観戦だったので2、3点のみ簡単に書くと、「MIPは西川周作」「城福システムにおけるボランチの役割をプレーで表現できるようになってきた今野」「あのプレッシャーの中よくぞ決めてくれました梶山!」「主演:高山主審(こういう日もあるので、一方的に審判を非難してはならない)」といったところだろうか。大分サポーターのブログもいくつか拝見したが、退場になってアウェイ側を歩くエジミウソンに対して「エジミウソン」コールが飛んだとか。現場にいなかったので事の詳細は分かりかねるが、事実であれば「粋じゃねぇ」と申し上げるに留めておく(WWEが大好きだった私としては、こういう時に歌う歌として「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye」を推薦したい気持ちもあるが、他人の庭で安易な行動は控えるべき、とも思う)。
さて、今回は書評。正直このマンガについて書くタイミングとしては2、3年程遅れている気がしないでもないが、まとまった文章で感想を書いたことがないので取り上げる。
戦国時代について書かれた書籍・マンガの数は枚挙に暇がないほど数多くの作品があるが、この作品を読むまで「仙石秀久(センゴク)」という武将を全く知らなかった。そのこともあって誌上でずっと読み進めていたのだが、面白い作品であることは間違いない。講談社漫画賞は落選してしまったようなのだが、受賞する価値は十二分にある作品だと言い切ってしまおう。
一兵卒としてセンゴクが戦を駆け、多くの人と出会い、戦国武将として成長していくビルドゥングスロマンとしても読み応えのある作品であるが、この作品の魅力は戦国時代において「定説」となっている様々な説・人物像に対し、「だがこの定説には疑問が残る」と異議を唱え、多くの資料を基にして独自の戦国絵巻を展開していく点にある。例えば「天正記」最初のヤマ場である長篠の戦いにおいて、「鉄砲3000丁による三段打ちにより武田騎馬軍団を圧倒した戦い」という「通説」に異を唱える。ここから先はネタバレになるので未読で興味のある方は読み飛ばしていただきたいのだが、信長が1000丁とも3000丁とも言われる多くの鉄砲部隊を率いていたことは事実だが、その運用方法は「武田軍部隊を織田本陣近くまで誘い込み、鉄砲奉行5人(佐々成政、前田利家、野々村正成、福富秀勝、塙直政)が武田軍を巧みに包囲する。その後、織田本陣を見渡せるハタホコ山に布陣した羽柴秀吉の合図の下、鉄砲による包囲一斉射撃にて戦局をひっくり返した戦」として描く。
戦国武将においても、信長や秀吉については人々が持つイメージとそれほどかけ離れた印象はないが、明智光秀については大きく異なる。ルイス・フロイトの評にある「裏切りや密会を好んで 刑を科すに残酷かつ独善的」「己の偽装に抜け目なく 戦において得意は謀略 忍耐に富み契約と策謀の達人」という、「戦国大名を絵に描いたような男」として描く。風貌も優男とは大きく異なり、自らの狂気を高めるために化粧をして戦場に臨んだりもしている(Wikipediaによると、外見のモデルはヒュー・グラントだとか)。謀反の原因と言われた叡山焼き討ちについても、反対の立場ではなく、焼き討ち後に一番出世を果たしたのが光秀という点から、むしろ光秀が焼き討ちの中心にいたのではないか、という説を取っている。
また、今川義元についても外伝である「桶狭間戦記」において、これまた「父以上の名君」として描かれている。こちらはまだ未完なので、通説の桶狭間をどのような形でひっくり返すのか、楽しみにしている。
現在連載では手取川の戦いを描こうとしている。この合戦もまた様々な説が飛び交っていて、筆者がどのような形でこの合戦を描くのか楽しみにしている。
本編・外伝含めて20巻以上になる「センゴク」シリーズだが、「本能寺の変」と「山崎の戦い」という戦国時代最大のヤマ場に至るまではまだ先の話なので、戦国時代好きでマンガに抵抗がない方には是非とも単行本を手に取り、既刊全てを読破した上で私とともに「本能寺がどう描かれるのか」を楽しみにしながら毎週ヤングマガジンを読んでいただきたい。
